第16章

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今までだって何回も名前で 呼ばれてきたっていうのに… たった数ヶ月の間、呼ばれなくて まるで他人行儀のように ただの同僚として接してて… なのにまた、こうしてあたしの名前を 呼んでくれる春都さんに ドキドキが止まらなくなる。 そしてあたしは、ゆっくりと振り返る。 『あのさ…、俺みのりのこと着信拒否 したわけじゃないから。』 『え………? ――――だってあの時…』 確かに、繋がらなくて… 機械音声が流れてきて…いたのに…。 『落としたんだ、 ………… ……………… ……トイレに。』 『…はぃ?』 『ポケットに入れててズボン下げたら 落ちちゃって…。ほら、俺のスマホ 防水じゃなかったからデータ全部 吹っ飛んじゃって。だから… ごめん…。新しい番号新たに登録して ほしい。』 あー‥‥‥、そういう事だったの。 『凄く、ショックだったのあの時。 会社では会えないし電話は繋がらないし 春都さんに完全に嫌われたと思ってた。 まさか水没だったとは…』 しかも…… トイレに。
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