第18章

35/35
135人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
そして俺は彼女の細い身体を抱き締めた。 『本当だよもう… 。苦しくて辛くて こんなに好きなのに春都さんには 帰る場所があるのかと思うと… あたしは、どうする事も出来なくて… …だけどあたしだって 離れたくなかったからずっと、ずっと… 何も言わずに耐えてきたの…。 だけどごめんなさい…。 浮気したのは…… あたしの方だったね。』 そう言って俺から離れた、みのり。 『優斗の優しさに… あたしは…… 甘えてしまったの…。 …春都さん、見たんでしょ? あたしが優斗と…キスしたところ。 あの日、会社に春都さんの奥さんと 子どもが来たと思ってたの…。 次の日には出張に行かなきゃいけなくて これが現実なんだというショックと、 この先の不安でいっぱいいっぱいだった。 だから…、気持ちを誤魔化すように あたしは………。』 それはあの時、俺がわざと誤解するよう 仕向けた事。 門崎の元で、幸せになるようにと そう、手放したのは……俺なのに。 今はもう、そんな決断しか出来なかった 自分が憎くて仕方ない。 だからもう二度と、彼女は…手放さない。 『みのり、俺はこの先、何があっても 絶対に手放さないから。 だからさ、一緒にニューヨークに 来てくれないか。 みのりが今の仕事を大切にしている事も あのポジションにいるみのりが どれだけ慕われているのかもわかる。 だけど…、一緒に仕入れして思ったんだ みのりにはバイヤーの素質もあるって』 俺がそう、言い終えた時だった___ 『ただいま、みのり。』 帰ってきたんだ、門崎が。 『… え?』 何も、驚くことも、焦ることもない。 ただ… 決着をつけるだけ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!