第20章(最終章~)

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でも…… 『ありがとう、お母さん。 幸せになるね。』 あたしの声に、母は言葉にならないほど 涙を流し微笑んでくれた。 今、こうして母に存在価値を 認められることができたのは 春都さんと、結婚することが…… っていうか… “春都くんが毎日来て…”って 春都さん、うちに来たの初めてじゃ なかったの? 『ねぇお母さん、春都さん 毎日来てたの?』 あたしがそう聞くと、 『ええ、門崎さんが来た翌日だから…… 昨日も来たし、今日で5日目かしらね。』 えーーー まぁ確かに、仕事が残っていて 帰りが遅くなると言って 毎日帰りは22時30分以降。 でも、もう明後日にはNYに 行ってしまうし、ただ、忙しいんだと 思っていたし 遅くなっても毎晩、必ず あたしのマンションに来てくれていた。 …なにも知らなかった。 じゃあ、来る途中の緊張は なんだったんだ。 なんて考えていると… 『みのり、祥吾おじさんって覚えてる?』 祥吾おじさん? ………誰だろう。 『わからない。‥誰?』 すると母は、 『ほら、小さい時に……って 覚えていないわよね、みのりは確か 2歳くらいの時だったんだし。 二週間だけね、お父さんが仕事の関係で 派遣に来ていた祥吾さんを 家に連れてきて泊めていたことが あったんだけど‥‥‥‥ 今は確か、タクシーの運転手をしてる とかって。 春都くんが家に来た時に たまたま祥吾さんが家に寄ったのよ』 全く、覚えていない。 家に祥吾おじさんって人が 泊まっていたことも、 祥吾おじさんの存在も。
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