第20章(最終章~)

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『あ。そうだ、みのり。 お父さんね、去年から陶芸を始めたの。 そしてね、どうしてもみのりにあげたい って言って、作ったものがそれ。 さっきお父さんが渡した箱。 ‥‥‥‥開けてみて。』 本当は、この場で開けていいものか 迷って、テーブルの下に置いていた箱。 春都さんが、テーブルの下からとって あたしに箱を渡す。 そして、箱をあけてみると… そこには、少し歪な形をしているけれど 底がせまく、細長いグラスが2つ、 並んでいる。 『……これって、、、』 あたしが、そう言うと 『夫婦茶碗ならぬ、夫婦グラスよ。 ちょっと形が変でしょ? ……だってコレ、お父さんが初めて 作った作品だもの。 去年、陶芸を習い始めた頃に、 いつかこんな日が来たらみのりに 渡すんだって言って張り切って作ってたの おかしいでしょー? いつになるかわからない娘の嫁ぐ時の為に 何も、こんな……今作ればまだ、 もう少しマシなモノ作れたはずなのにね』 そう言って笑っている母に、 薄っすら微笑んでいる父。 『いいんだよ、これで。 あたしは、これがいい。 ね、春都さん?』 昔から父が不器用なのは知っていて、 日曜大工なんかさせた日には 物を作るどころか、材料を壊すところから 始まっていた父が、 習い始めた陶芸で作品をあたしの為に 作ってくれたのかと思うと、 それだけで嬉しくてたまらない。
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