第20章(最終章~)

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それからお母さんは台所に行き、 料理の支度を始める。 それから、どうしてこうなっているのか わからないまま、“みのり、手伝って”と 言われたあたしは、台所で お母さんの手料理の盛り付けをしている。 『ねぇ、みのり。……ごめんね。 今更なのはわかってるの。 貴方が、私を良く想ってくれてないのは。 でもね、私は貴方の事、決して 邪魔だとか嫌いだとか思った事は 一度もないのよ。 ……心ではわかっていても……… 口にすれば酷い事ばかり言ってきたと 思うわ。みのりはそれが原因で ココ(実家)に、寄り付かなくなった 事も。』 火にかけている鍋を温めながら あたしに背を向けて、 恐らく泣きながら話しているであろう お母さんの背中は小さく、小刻みに 揺れている。 ………あたしは、こんなお母さんを 初めて見た。 二人姉妹だったあたしは、 いつも母に叱られていた。 理不尽な理由だと思ったこともあった。 __お姉ちゃんなんだから1人で できるでしょ? __お姉ちゃんなんだから、当たり前なの ____我慢しなさい。 ____そんなコトも出来ないの? そう言って、育てられてきたあたし。 何度、自分が妹だったらよかったのに‥ ……と、思ってきただろう。 あたしは、この人にとっては 邪魔者でしかないんだ。 しっかりしていなきゃいけなくて 甘えることなど許されない。 この家に居ても自分が窮屈になるだけ。 そう思って、高卒後に家を出た。
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