第20章(最終章~)

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『ごめんね、みのり。 今子育てをする娘を見て、 昔の自分を思い出すなんて…。 許してもらおうなんて思っていない。 だけど、心から想うのよ、 結婚、おめでとう。って。 門崎さんが来た時、どこで何をして 暮らしているのかわからない娘の話を 聞いて、怒る資格なんてないのに あんな事言ってしまって…… あの、翌日から毎日、春都くんが 家に来てね、本当の事を話してくれたの。 もちろん、みのりがあたしに抱く気持ちも ………いい人に出会ったわね、みのり。 幸せになりなさいよ。』 そう言ってお母さんは溢れ落ちる 涙を拭いながら、 おそらく、初めてあたしに優しく 微笑んでくれた。 その笑顔はどことなく、自分に似ていて なんだか不思議な気持ちになった。 そして、お母さんとの間に今まであった 壁は、それも不思議なことに なくなっていく、そんな気がした。 あんなに気が強くて、怒ってばかりいた母 そんな母が今、あたしに頭を下げて 謝っている。…こんなこと、 初めての事だ。 あたしはきっと、小さいながらに 構って貰えない寂しさから 妹に嫉妬していたのかもしれない。 妹とは表面上、仲良くしていたけれど 心の何処かでは、距離を置いていたあの頃 家の中に居る事すら 嫌で嫌でたまらなかった。
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