武田②

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「まぁまぁ佐藤さん。良いじゃないか。」 こんなところで揉めている場合じゃない。 「OK。あなたたちが新人類ってことにしよう。じゃあ・・・僕たちはさしずめ旧人類ってことかな。」 そう。呼び名なんかどうでも良い。もっと楽しくて、ワクワクすることにこれから挑戦できるのだから。 「そうなるな。小さき種族、いや旧人類よ。」 「新人類さん達は近い将来、食糧が足りなくなることを心配しているんだよね?これから数も増えるかもしれないし、一人一人の食べる量も多い。」 「その通りだ。どうだ?別の方法があるなら話してみろ。」 「いや僕が提供するのも同じ話さ。この星のうちのいくつかの地域を柵で囲い、新人類の皆さんにはその外で食事をしてもらう。」 でもね。と武田は主張を続ける。 「実はそうした方が新人類の皆さんにもメリットがあるんだ。僕たちを好き勝手食べるより、柵で囲って生かしたままのほうが、旧人類を、長い間にわたって美味しく、そして十分な量を食べることができる」 ハエのような目がさらに大きく開かれる。 「それはどういうことかというと。」 新人類の問いに答えながら、武田はあることを思う。 きっと自分が人間を捨てるとしたら、多分この瞬間だ、と。
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