猫が悩む。

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 主人のケイちゃんが、「雨がひどくなっちゃった」と言って、傘を振って玄関にはいってきたのに、おかえりの顔も見せようとしない。  この猫、ほんとうに猫なのか?   猫そっくりの置物だったら、いままでの、この猫との付き合いは、いったい誰に問い合わせたら、答えをもらえるのか?   みょうな観念が、脳裏によぎる。ふと思う。  この猫に、たたられるか、もしかして、のろいをかけて、悩んでいる格好をしているだけじゃないのか。  猫はなんにも答えてくれない。  あくまでも、悩みの世界。  悩みの無間地獄だ。  と思ったけれど、そんな顔つきは、まったく見せない。
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