第1章

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僕たちは家が近かったこともあり、子供のころから一緒に遊ぶことが多かった。中学生になるとさすがに小さな頃ほど一緒に遊ぶ事は減ったものの男子バスケ部だった僕と女子バスケ部だった久乃とは接点が多かった。久乃がバスケを始めたのは中学生になってからだったが、体格に恵まれなかった久乃は持ち前の頭脳とゲームメイクで万年地区大会ベスト8止まりだったバスケ部を全国大会に導いていた。学校の成績にバスケ部での活躍。幼さが残っていた顔から思春期を経てバランスが整った顔立ちになった久乃は、学校のスターになっていた。 色んな男に告白もされていたらしかったが、誰かと付き合った事はなかった。その辺りの事を聞いてみた事もある。 「兼森。私は恋愛というのは素敵なものだと思う。誰かを慈しみ誰かの為に何かをしてあげたいという気持ちはとても素敵なものだと思うのだよ。無償で誰かに対し愛情を与えたいということは尊い行為だ。そして愛とは対等で等価な気持ちの交換だ。こんな素敵な関係はこの世界には二つとないだろう」  大仰だなと思ったのが当時の僕の感想だった。 あれは中学2年の2学期の終業式の日だった。その日は雪が積もっていて部活動も早めに切り上げて帰宅命令が出されていた。たまたま帰りが一緒になった陽菜岸と三人で帰り道を急ぎ足で帰っていた。僕たちが生まれてから初めてというほどの大雪は交通機関や町の道路を混乱の渦に巻き込んでいた。電車は止まりあちこちで渋滞に苛立ったドライバーの鳴らすクラクションが響いていた。 「雪って言うのは綺麗だと思わないか」  大粒の雪を降らせ続けている灰色の空を眺めながら久乃は言った。 「んー。綺麗だけど私は部屋の中から見ているのがいいなぁ。靴は濡れるし。寒いし」  陽菜岸が地面に積もった雪を足で避けながら言った。 「まぁ。確かに一面白い世界って言うのは初めて見たし綺麗だよね確かに」  雪があまり振らないこの辺りでは珍しい大雪に心が弾んでいるのは自分でも自覚していた。新雪が積もった地面はどこまでも白かった。足跡をつけるのが勿体ないと思う程だ。 真っ白な地面に自分が歩いた足跡がくっきりと残る。それがまた不思議と気持ちよかった。  信号機のある横断歩道の前で足を止める。車や人間の手で路肩に追いやられた雪が茶色くなって固まっているのが見えた。
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