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図書館の入り口には、新刊、新聞、定期刊行物などの閲覧スペースに、検索用のパソコンが三台ある。そして、長方形に仕切られた図書館室の小窓が、図書カウンターの役目をはたしている。
僕は、月刊地理を返そうとカウンターの小窓を覗いた。
「あら、坂崎君、今日は終わり?」
図書館室の奥で、なにやらパソコンを操作していた小池さんは、小柄ながらスラッっとした体系で、豊満な胸元を揺らし、ポニーテールのよく似合う瞳を、僕に向けた。
「ちょうど休憩しようと思ってたの。お茶、飲んでいかない」
若干アルト気味の透った声で誘われ、断る男子がいるだろうか。とはいえ、小池さんが僕をお茶に誘うのは、挨拶のようなものになっていた。
図書カウンターに置かれているプレートを、「奥にいます。御用の方はボタンを押してください」に小池さんは変えて、僕は、隣のドアから、図書館室に足を入れた。
お茶といっても、お茶を飲むのは小池さんで、僕は自分でインスタントコーヒーを入れるのが、習慣になっていた。図書館は湿気が大敵なので、休憩するのは図書館室のまた奥にある、図書準備室と書かれた物置なのだ。
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