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渡り廊下に出て、教室のある西図書館から渡校舎を通り越し、職員室と教科の特別教室がぎっしりと詰まった東校舎への渡り廊下に差し掛かかり、石田が僕に呟いた。
「坂崎、マウスピースって、どんなやつでも吹けるか」
「なんでもってことはないけど、標準的なのなら、吹けるんじゃない」
僕はなんとなく答えたつもりだったが、自分で答えていて、何かが頭の中で、つながった。このまま前進していくと、多分、階段を上る。そして、四階まで行くと、右折して、突き当りまで連れて行かれる。そんなことを思い浮かべながら、状況が読めないことに、混乱していた。案の定、思った通りの道順で、目的地の音楽室が目の前に迫っていた。
僕は、石田に音楽室の手前で止められ、その脇にある音楽準備室に連れ込まれた。
「詳しいことは、後で話す。今は、一回でいいから、連中と吹いてくれないか」
といいながら、何年前のトランペットなのか既に分からないくらいのケースを僕の前に置き、楽譜を手渡される。訳の分からないまま、その楽譜のタイトルを目で追った。
「ショスタコの五番、か」
「吹いたこと、あるか?」
「聴いたことくらいしか、ないけど・・・」
「とりあえず、音出し、なっ」
と言うと、石田は隣の音楽室へ、そそくさと姿を消した。何のことかさっぱり分からないが、あと少しで昼の時間だから、うむを言わさず、ブランのカツサンドを奢らせてやると思いながら、僕は、年代もののトランペットを手に取っていた。
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