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「消えた……!?」
「貴様らぁぁぁぁっ!!」
残りの一人が怒りに任せ、近くのクラスメートを襲おうとする。しかし、ヲタクのエルフが鎖を投げつけ、敵の腕に巻き付ける。
「ぎゃあっ!?」
あっという間に数字を零にし、敵は目の前から消滅する。さっきから何がどうなっているか訳が解らない。
「おい! この頭上にある数字は何なんだ!? 零になった瞬間、奴等が消滅したのはどういう仕組みなんだ!?」
「は……? お前、マジで言ってんのか?」
ゼクスに蔑まれるように睨まれ、他のみんなもキョトンとした表情で俺を見ていた。この反応からするに、どうやらこの仕組みについて理解していないのは俺一人のようだ。
「あまりの恐怖に記憶が飛んだか? 混乱してるだけか?」
「いえ……この反応は本当に解ってないみたいね。鎌倉君、あなたRPGシステムを知らないの?」
「おいおい、RPGシステムを知らないとか有り得ねーだろ。今までどんな暮らしをしてたら、このシステムを理解しないまま過ごせるってんだ?」
「君は黙ってて。鎌倉君、どうなの?」
俺は記憶喪失だ。常識やある程度の知識は持っている物だとばかり思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
そのRPGシステムって言うのも知っていて常識みたいだが、残念ながら俺の知識として残ってはいないようだ。
「実は俺……記憶喪失なんです」
「こいつ、マジでイカれてんじゃねーか?」
「あぁ、イカれてるよ。だって、昨日までの記憶が一切残ってないんだからな。あるのは、自分の名前と両親の顔と名前、そして家族だったって事だけ……嘘だと思うならそれで良い。笑いたきゃ笑えよ。頭がおかしいってな……」
「別に誰も笑わないわよ」
誰もが記憶喪失なんて信じる訳がない。そう思いながらも事実を淡々と語ると、先生は真面目な顔でそう応えた。
「この状況でつまらない冗談を言うような子じゃない。だって君は、思った事を結構口にするようだしね。先生である私をぶっ飛ばすとか言ってたし」
クスッと先生が笑いながら、皮肉にも聞こえるような事を口にする。確かに、転入生がいきなり初対面の先生に暴言を放つのはどうかと自分でも思う。
だけど……この先生は、そんな俺の話を真面目に聞いて受け入れてくれている。そう思うと、何だかうれしく感じる。
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