一章 テロ事件

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 まさかこの人……天然教師か! さっきから自分のペースで淡々と話を進めてるし、俺に資料送るの忘れたり遅刻したり……寧ろ天然ではなく不真面目な教師だ! 「もう、自己紹介がしたいなら最初から言ってよね。この目立ちやがり屋さん」  先生はウインクしながら悪びれもなく俺の神経を逆撫でするような発言をする。 「ぶっ飛ばして良いですか?」 「おい、お前。さっきから先生に向かって失礼な発言をし過ぎだぞ」  一番前の真ん中の席に座っている眼鏡を掛けた美形のエルフが、人差し指で眼鏡をクイッと上げながら俺を睨み付けて来る。  黄緑掛かった長髪で、前髪はM字型。V系に近いビジュアルと言った方がしっくりと来る容姿だが、あの眼鏡がインテリっぽさを引き立たしている。ただ── 「転入生だが何だか知らないが、生徒らしく振る舞え。風紀を乱すような事をするな」 「アニメの女の子をデコッたネクタイをしたお前に風紀云々を語られたくねーよ!」 「き、貴様……! この大人気アニメ、マジカル萌子の萌ピーがデコられた素晴らしいネクタイを侮辱したな! この学園の恥晒しめ!」 「お前は学園どころか社会の恥晒しだ! 場所を弁えて服装を選べ!」 「こらこら、新年度早々喧嘩しないの!」  困った顔をした先生が、俺達の間に入って喧嘩を止めようとする。V系ヲタクエルフは俺を払うように鼻で息を吐き、ネクタイを優しく撫で始める。 「全くもう……それじゃあ鎌倉君、改めて自己紹介をお願いします」 「あ、そっか……えっと、この春から学園に転入することになりました鎌倉英雄です。まだこの辺の事とかよく知らないし、戸惑いも沢山ありますが、皆さんの事を含めてこれから色んな事を知って行きたいと思います。どうか、一年間宜しくお願いします!」  自己紹介を終えると、先生を初めとしたクラスのみんなが拍手で俺を歓迎してくれる。ただ、真っ正面に居るこいつは鬼の形相で俺を睨んでいたがな。  それにしても、このクラスは人間の他にもエルフと魔族もそれなりに居るみたいだな。天使は居ないみたいだ。 「それじゃあ、鎌倉君の席は……彼の横ね」
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