四章 男嫌いの理由

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「急にごめんね。君には、やっぱり伝えておこうかなって」 「伝えておく?」 「うん。こんな事、本人に知られたら……私はきっと絶交されるだろうけどね」  本人と言うのは、アウロラさんの事で間違いないだろう。あいつが言っていた通り、セナさんは俺に相談を持ち掛けてきた。  今朝の話と何らかの関係があるのかもしれないけど、本人に知られたら絶交されるって事は── 「そんな話を……俺にする意味はあるのか? 正直、力になれるとは思えない」 「あはは……もしかして、何となく内容に気付いちゃってる感じかな?」  いつも笑顔を絶やさない彼女の表情が、少し引きつっている。多分、彼女自身もまだ話して良いものかどうか悩んでるのかもしれない。でも、セナさんはここで引き下がろうとはしなかった。 「アウロラの体にはさ……結構な数の痣があるんだ。生まれつきとかじゃなくて、生新しい痣が……沢山ね」 「ちょっ!? セナさん!?」 「良いの。私は、君が他のみんなに言い触らしたりしない人間って信じてるから。例え、何らかの形でアウロラに知られて嫌われても……私は後悔しない。だって、だって……わた……し……」  セナさんはボロボロと大粒の涙を溢し、笑顔が崩れてその場で座り込んでしまう。唐突な展開に俺は頭が真っ白になり、一瞬硬直する。 「セナさん!?」 「見てられないんだよ! アウロラが我慢してるところを……本当に辛い思いをしてるはずなのに、誰にも……私にも話そうとしないで笑顔で誤魔化して!」 「落ち着いて!」 「もう……鎌倉君しか頼めないの! このままだと、アウロラは男嫌いが増すだけじゃなくて、心も体も壊れちゃうよぉぉぉ……!」  ──彼女は本気だ。本気で俺に頼ってきている。まだ知り合って間もない俺に、情けない姿になってまでも……親友に嫌われる事になるかもしれないのに、俺を本気で信じて話してくれている。  アウロラさんが追い詰められているのは、彼女を見て理解した。だけど、セナさんもまた親友の現状に心を酷く痛めている。  今はまだ、ギリギリのところで俺達の関係が保たれている。けど、それも時間の問題であってアウロラさんにもしも何かあれば、彼女も自分をきっと責める。何も出来なかった自分を責め続ける。  そしてそれは、俺達にまで──
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