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「でも、何で俺は平気なんだろうな?」
「そんなの決まってるじゃん! 君はあの時、自分の身を犠牲にしてまで、私達を逃がしてくれた。それだけじゃなく、この学園を救ってくれた。アウロラにとって初めてだったんだと思う……そんな男性を見たのはね」
食堂であの連中に絡まれた時、セナさんが同じような事を言ってたな。アウロラさんにとっては、男である俺の行動が衝撃的だったのだろう。
彼女にとって男性は、最低な屑野郎という認識しかなかったんだろうな。けど、そんな認識を俺が覆した事になるのかな?
「それからはね、アウロラは君の話をする事が多かったんだ」
「俺の事を?」
「そだよ! ほら、前にスーパー買い物した時に偶然会った時があったよね!」
「あ、あぁ……あれね」
あれは、本当に衝撃的だった。セナさんが、満面の笑みでモザイク規制が掛かるほどのグロテスクな素材を購入してたんだもんな……思い出しすだけで気分が悪くなる。
「その話をしたら、私も行けば良かったーって言ってたし、君が何を買ってたのかも聞いてきたりしてたんだよ!」
「大したもの買ってないのにな」
「この前なんて、君に絡んだ連中に説教もしてたよ。私の友達がアウロラにチクって、もう眉間にシワを寄せて怒鳴り散らすようにね。あれは面白かったなー! アウロラが男の人の悪口言われて、本気で怒るとこ見たの初めてだもん!」
俺の知らないところでそんなエピソードがあったのか。にも関わらず、あの連中は俺に因縁吹っ掛けて来たけどな。あいつらも大したもんだな。
「それで私、確信したんだ。アウロラは、鎌倉君が好きなんだって」
「えっ?」
「アウロラ自身も気付いてないと思う。でもね、君の話をしてる時は……とても楽しそうなんだ。他の男の話をする時は、全く興味無さそうにしてるか嫌そうにしてるかだから」
あんな美少女が、俺の事を好いてくれている……だと? 例えそうだとしても、俺と彼女じゃ釣り合わないだろ。特に、俺自身は得体の知れない人間なんだからさ。
「だからね、君とアウロラがくっついちゃえば、今の男とは切り離せるかなって……淡い期待をしてたんだ。それは無駄な事だって解っていても……」
「無駄?」
「例え、二人が両思いだとしても。今回の政略結婚は破談出来ない……出来る筈がないの」
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