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セナさんの声のトーンは低くなる。俺は息を飲み込み、彼女が次に口にする言葉を待った。
「今回の相手は……裏社会に通じるビシソワーズ家の人だから」
随分と美味しそうな名前だな。そんな旨そうな家が、裏社会に通じるヤバいところって事か。そうだよな……前まで彼女が嫌だと言えば、それで済む話だったんだもんな。
今回だって、嫌なら嫌と言えば良いだけなのにそれをしないのは……きっとそれが理由だな。
「そのビシソワーズ家は、ローレライ家から申し入れたのか?」
「ううん、違う。いつもは、ローレライ家が相手を決めてたけど、今回は相手からだったんだ」
「相手から……?」
「ビシソワーズ家は、ローレライ家を取り込んで表社会にも進出出来るようにしようって魂胆なんだよ」
昨日、みんながローレライ家は凄い権力を持った家だと言ってたな。裏社会に通じる家が、表社会で大きな権力を持つ家を吸収して、更に権力を拡大させるって事か。
表と裏を支配出来れば、世の中やりたい放題出来る訳だからな。
「一つ聞いて良いか?」
「どうしたの?」
「何でセナさんは、そこまで知ってるんだ?」
親友だからって、内部事情を知り過ぎている気がする。彼女は一体……何者なんだ?
「そう言えば、君には話してなかったね。ニールバレット家は、ローレライ家とまでは行かないけどそれなりの財閥なんだ。それで、昔からローレライ家とも仲が良くて、よくローレライ家の事情とかも聞くんだ。私のお母さんとアウロラのお母さんは、幼なじみだしね」
俺の知り合いの女の子は、みんな金持ちかいな。きっと、セナさんは母親からローレライ家の事情を聞いてるんだろうな。
まぁ、ローレライ家もそんな大事な事をニールバレット家に話す事じゃないとは思うが……もしかしたら、ローレライ家がニールバレット家にSOSを送ってるとか?
「話を聞いて思ったんだけど……俺、何か出来ることあるか? 想像以上に相手が化け物なんだけど」
「鎌倉君には、私と一緒に切っ掛けを作って欲しいんだ」
「切っ掛け?」
「いくらビシソワーズ家でも、ローレライ家とニールバレット家の両家を相手するのは分が悪いからね」
「つまり、ローレライ家とニールバレット家がビシソワーズ家と敵対する切っ掛けって事だよな?」
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