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無理ムリむり、絶対無理なんですけど。大体、俺はローレライ家やニールバレット家と親しい訳ではないし、そんな権力なんて勿論無い。
切っ掛けを作るって、相当大きなイベント起こさないと無理だって。下手したら、俺は三家とも敵に回してゲームオーバーになっちまうよ。
「具体的な作戦は、まだ何も思い付いてないんだけど……ぶっつけ本番でもなんとかなるよね!」
ならないよ。そんな無策で突っ込んでも無謀なのは目に見えてるんだけど。遊び感覚で悪戯しに行く訳じゃないんだし、もっと綿密な作戦を立てなければバッドエンド直行だ。
彼女もふざけてるようには見えないけど、さすがに何も考え無しは危険過ぎる。
「例えば、ビシソワーズ家がローレライ家のご令嬢に酷いことをしているという証拠を突き付けるとかなら出来るんじゃないか?」
「あー成る程な。それなら、十分な切っ掛け──うわぁぁっ!?」
ナチュラルに背後から会話に入ってくるネールに驚き、俺は情けない声を出しながら背をフェンスに思いっきりぶつける。
「ネール君!? それに……ゼクス君まで!?」
「話は聞かせてもらったよ」
「盗聴だけどな。後でこいつ沈めるなら手を貸すぞ」
「貴様も同罪だろ!」
「てめぇが勝手に聞かせて来ただけだろ。俺に罪はない」
「ちょっと待ってよ! もしかして、私達の話を全部聞いてたの……?」
顔を青ざめながら、彼女は二人に質問する。ゼクスは顔に手を当てて申し訳なさそうにしているが、ネールは謎に格好つけたポーズで対応していた。
「なんて事なの……鎌倉君にだけ打ち明けようって決めてたのに……アウロラに合わせる顔が……」
「過ぎた事だ。仕方あるまい」
「盗聴してた本人が言う台詞じゃないだろ」
「もっと反省しろよ。おい、セナ──」
ゼクスが彼女に歩み寄ろうとすると、セナさんのビンタが彼の頬を直撃する。パンッと痛々しい音が耳に響き、俺も無意識で片眼を瞑る。
「最低……だよ」
「そう……だな。どんな理由があろうとも、俺は最低な事をした。謝って済む問題じゃない……セナとあの女の信頼関係を壊しかねない行いだ」
ゼクス……お前が悪い訳じゃないのに、ちゃんと律儀に謝るなんて男らしいぜ。それに比べて、ビクビクしながら俺の後ろに隠れてるこの男は屑の極まりだろ。
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