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いつものように母さんに叩き起こされ、リビングに降りて朝食を摂る。目玉焼きにベーコン、そして味噌汁に白米といつものメニューがテーブルの上に並べられていた。
それをペロッと平らげると自室に戻り、制服に着替える。天気予報では晴れだと言っていたが、窓の外を見ると雲行きが怪しく、今にも降りだしそうだった。
「はぁ……」
昨日、あれだけ四人で頑張ろうって話をしていたのに、やはり一人になると色々と考えてしまう。あの時は、何でも出来るような感覚になっていたけど、どう考えてもこれから行おうとしていることは現実離れし過ぎていて不可能だと考えてしまう。
俺達だけの問題ならまだ良い。しかし、相手が強大なだけに周りの関係無い人達まで巻き込まれるんじゃないかと不安が過る。
深い溜め息を吐くと、俺は鞄を持って玄関まで移動する。靴を履いて、ドアノブに手を掛けた時だった。
「英雄、折り畳み傘だけでも持って行きなさい」
母さんが俺を呼び止め、俺に折り畳み傘を手渡す。それを受け取って鞄に入れると、母さんが俺の頬に手を添えてくる。
「いきなりなに!?」
「あんたさ……大きな悩み抱えてるでしょ?」
「えっ!?」
さすが母親だ。息子の異変に気付いていたようで、心配そうに俺を見ていた。
もし、俺が余計な事をしたせいで母さんまで巻き込まれでもしたらと思うと、どうしても気が進まない。アウロラさんを助けたいのは本心だが、それが正しい判断なのか解らない。
「何でもねーよ」
「嘘おっしゃいな。友達と喧嘩した?」
「それはしょっちゅうだ。そんな事で悩んだりしないっての」
「私に相談出来ない事なら、無理に話さなくても良いわ。話せるようになったら、いつでも話聞いてあげるからね」
母さんが笑みを浮かべ、俺の頭をやさしく撫でる。それが余計に、俺の決心を狂わせる。
「おう。んじゃあ、行ってきます」
「英雄!」
「今度は何なの?」
またもや呼び止められ、振り向くのも面倒なのでそのまま話を聞こうと立ち止まる。
「友達は大切にしなさいよ。失ってからじゃあ……遅いんだからね?」
母さんの言葉に、何故だか説得力を感じた。とても意味深で、まるで自分が体験したかのような言い方だったからだ。
「言われなくても解ってるぜ」
俺は扉を閉めた。
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