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「わぁ、中ってこんなふうになってるんだぁ」
中に入って最初に口を開いたのは葉子だった。
葉子は荷物を置いた忠孝が蔵に行くと聞いて、慌てて着替えを済ませて付いてきたのだ。
辺りをキョロキョロ見渡す彼女を振り替えると忠孝は尋ねた。
「あれ?ここに入ったの初めて?」
「そうだよ。たぁ兄ちゃんはあるの?」
「昔、何度かね。陰干しとか空気の入れ換えで開いてた時に忍び込んだんだ。一度爺ちゃんに見付かっちゃったけど」
苦笑する忠孝に葉子は昔はやんちゃだったのかと興味深そうに驚いていた。
そんな葉子を余所に久々に中を見渡す忠孝。そこには昔見たまんまの風景が広がっていて、タイムスリップしたような感覚に捕われる。
巻物だらけの棚やよく解らない置物の類い。あの時冒険したままだ。ほら、あそこの柱の傷は自分が転んで置物をぶつけて出来た跡だ。
変わらない。
懐かしい。
…けど、これはこんなに低い所にあったっけ?
気が付けば様々な物が小さくなってしまった。
まるで不思議の国で大きくなる茸を食べてしまったアリスだ。
時が経つとはこういう事なんだなと少しだけ寂しくなった。
「この蔵、無くなっちゃうんだね」
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