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「だってぇ。たぁ兄ちゃんなかなかコッチに来れないじゃん。ね!ね!今日は泊まって行くんでしょ!?」
葉子の泊まるというキーワードに忠孝はちょっと申し訳なさそうに奈美江を見て切り出した。
「実は、そうさせてもらうつもりで今日お邪魔したんだ。うちの学校、明日休みなんです。だからじっくり品定めさせてもらおうと思って…」
「うそ!?やった!
お母さーん。私も明日学校休むー!」
「なーに言ってんの!あんたは学校有るんだからダメに決まってんでしょー!」
あからさまに「えーっ」とぶーたれる葉子。年頃の少女らしくクルクル表情を変える。
幼い頃から自分の事を“たぁ兄ちゃん”と慕ってくる葉子を忠孝は妹のように思っていた。
そんなちょっと騒がしい妹君に背中を押され、家の中にお邪魔したのだった。
***
蔵の錠前がカチリと音を立てて開いた。
一度外した鍵は片方の扉にまた掛け直すと、忠孝は蔵の中へと足を進めた。
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