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「へ…?」
何が起こったの? という風にきょとんとした私の顔を見て、斎が表情を和らげ、自分の指を見せた。
「埃だ」
「は??」
「髪についていたぞ」
「……な、なにーーーーっ」
何? じゃ、今までのフリは、私の髪についた埃を取るため、ただそれだけだったの?!
なんなんだよ、それっ!!!
全身の力がドッと抜ける。
と同時に、悔しい思いが私の中を駆け巡った。
何だよ、それ! 人の気も知らないでーーー!バカーーー!!!
「行くぞ」
「どこにっ!」
「何怒ってるんだ。下に決まっているだろう?」
「…」
斎の涼しげな顔が、今ほど憎らしく見えたことなんてない!
全く、なんて奴、なんって奴!
私は部屋を出て、下で皆とお茶している時も、ずっと不機嫌なままで。
母親はそんな私に構わず、斎とおしゃべりをしていて。
そーよ、お母さんは斎さえいりゃ、機嫌いいんだからっ!
あーーーもうっ!!
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