scene.10

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「へ…?」 何が起こったの? という風にきょとんとした私の顔を見て、斎が表情を和らげ、自分の指を見せた。 「埃だ」 「は??」 「髪についていたぞ」 「……な、なにーーーーっ」 何? じゃ、今までのフリは、私の髪についた埃を取るため、ただそれだけだったの?! なんなんだよ、それっ!!! 全身の力がドッと抜ける。 と同時に、悔しい思いが私の中を駆け巡った。 何だよ、それ! 人の気も知らないでーーー!バカーーー!!! 「行くぞ」 「どこにっ!」 「何怒ってるんだ。下に決まっているだろう?」 「…」 斎の涼しげな顔が、今ほど憎らしく見えたことなんてない! 全く、なんて奴、なんって奴! 私は部屋を出て、下で皆とお茶している時も、ずっと不機嫌なままで。 母親はそんな私に構わず、斎とおしゃべりをしていて。 そーよ、お母さんは斎さえいりゃ、機嫌いいんだからっ! あーーーもうっ!!
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