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「何時頃、迎えに行けばいいんだ?」
「え? 迎えに来てくれるの?」
「…夜中に一人で外に出るつもりか、お前は」
実はこれまでそうでした…とはとても言い出せない雰囲気で、私は何とか笑って誤魔化す。
斎は呆れつつも、さっさと待ち合わせ時間を決め、迎えに行くまで待っていろと、私に釘を刺した。
「初詣、二人で行くのって初めてかも?」
「そうだな」
小学校の頃はよく一緒に行っていたけれど、もちろん親も一緒だった。
中学からは、お互いの学校の仲間と行っていたので、考えてみると二人きりは初めてで。
年が明けてすぐに年始挨拶のメッセージは送っていたけれど、来年はそんな必要もなくて。
そんなことを思うと、少し心がくすぐったい。
「迷子にならないように気をつけろよ」
斎の声がして、私はすぐさま唇をとがらし、斎の顔を見上げる。
「もう高校生なんだし、迷子になんてなりません!」
「どうだかな」
からかうような口調にムッとしながらも、これはポーズだ。
本当は、嬉しくてたまらない。
一緒に初詣に行っていた頃、迷子になりそうな私の面倒を見てくれたのは、いつも斎だった。
溢れかえる人込みの中、手を引いてくれた。
「斎が面倒見てくれるんだから、迷子になんてならないよ」
「…」
そう言うと、斎が呆れて息をつく。
面倒なんてみないと言ってみたところで、それが嘘であることなんてバレバレだ。
斎はそういう人なんだから。
きっとまた、迷子になりそうな私を見かねて、手を引いてくれる。
斎はどうなのかわからないけれど、私はあの頃とは全く違う気持ちで、また斎を頼りにするのだろう。
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