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斎を見送った後、私が玄関に入ると母親が待ち構えていた。
……今度は何?
「二人が部屋を掃除してるのを見てねー、お母さん、嬉しくなっちゃったわよ」
「はぁ? なんで??」
そう言えば、私の部屋を二人で掃除している様子を見て、上機嫌になってたっけ。
なんだったんだろう?
「家の大掃除してる姿がね、まるで新婚さんみたいで~」
「は…はっ!?」
「だって、手が届かない所は斎君がやって、あんたはその傍でまた別の片づけやってて」
「…」
何想像してんのよ、おかーさんっ!!!
私はパクパクと金魚のように口を開けて、呆然と自分の母親を眺めていた…。
……初詣、斎と二人で行くなんて言おうものなら、また舞い上がって訳のわからないことを言い出しそうだ。
私はそれを見越して、早々に自分の部屋へ戻る。
部屋に戻った途端目に飛び込んできたのは、倒された写真たて。
少し笑って私はそれを手にし、机の引き出しの奥に片付けた。
「あいつ、怒ろうかと思ったけど」
あいつとは、もちろんこの写真を無理やり飾った友達のこと。
写真の中で幸せそうに笑う彼女。
「…これじゃ、怒れないよね」
ポツンと呟いて、私はベッドの上にゴロンと横になる。
目を閉じてみても、とても心は落ち着きそうにない。
大晦日の夜を思い、私はしばらく胸の高鳴りを抑えることができずにいた。
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