22人が本棚に入れています
本棚に追加
と…
「いやぁ、いつも済まんなぁ」
今度は、親父が頭をかきながら俺の近くにやって来た。
親父も時々、仕事の合間に俺の所にやって来ては、あれこれと話をする。
「お前や弟は、いつもよくやってくれているよ。俺は歳のせいか、いつも仕事が遅い。お前達には本当に感謝している」
と、これもいつも親父が俺に言う言葉だ。
「何を言うんだ。親父」
と、俺も言葉を返す。
「親父が毎日頑張ってくれているからこそ、俺も弟もこうして仕事を頑張れるんだよ。謝る事なんか全然無いって。気にし過ぎだよ」
「そうか?そう言ってもらえると、本当に有り難いな…」
と、親父は目にうっすらと涙を浮かべた。
親父は、優しくて涙もろい性格だ。
俺達に対しても、いつもねぎらいの言葉をかけてくれ、気遣かってくれる。
自分だって仕事で疲れているにも関わらずだ。
俺は、そんな親父が大好きで、もちろん感謝もしていた。
俺達三人は…
固い絆(きずな)で結ばれた大切な家族なのだ。
仕事だって、それぞれがそれぞれに自分ができる範囲で頑張って毎日こなしているのだ。
それなのに…
あの弟ときたら……。
と、俺は弟の無理解な性格にだんだんと腹が立ってきた。
その時…
「おいっ!!」
再び、弟が声を荒げながら俺と親父のそばにやって来た。
「兄貴も親父も、そこで立ち話なんかしてないで仕事しろよな!全く!!」
「…なっ!!」
と、俺がついカッと来て弟を叱り付けてやろうとした時…
「まあまあ…落ち着け」
と、親父が間に入ってきた。
「お前達兄弟は、本当によくやってくれている。俺はその事に本当に感謝している。自分が仕事が遅いのは、よく分かっている。その事に関しては、本当に申し訳なく思っている。この通りだ…」
と、親父が俺達兄弟に対して深々と頭を下げたではないか!!
「親父!」
俺は、親父が頭を下げた姿を見て、ひどく戸惑ってしまった!
「親父!止めてくれ!頭を上げてくれよ!」
気が付くと俺は、親父に大声をあげてしまっていた!!
最初のコメントを投稿しよう!