8人が本棚に入れています
本棚に追加
狂気に満ちた目。
禍々しい笑顔の早苗は俺に「愛してるの」と何度も繰り返した。
ゆっくり這ってくる早苗が心底気持ち悪く、吐き気がする。
「……違う。俺は、お前を愛してなんかいない。おれは、俺はお前を騙したんだ。金だけ搾り取って、捨てようとしたんだ」
「愛してる……愛してるの……」
「……やめろ……来るなっ……!」
あまりの恐怖に、立ち上がった早苗の首を思い切り締めた。カハッと大きく口を開け、早苗は細い目を大きく開いた。
「あ……い……して……る……」
「うるさい! うるさいうるさい!!」
苦しそうに歪む顔でもまだ、早苗の口は「愛してる」と動いている。
やめろ。
やめろやめろやめろ!!!
半ば祈る気持ちで、きつくきつく早苗の首を絞め上げた。その力を緩めたのはアパートのドアをノックする音が聞こえてからだった。
強いノックが聞こえ、早苗の苗字を呼ぶ男の声がした。
「管理人の藤本ですけど。居るんでしょ? すいませんけど開けてもらえますか」
「は、はい、ちょっと待ってください」
すでに息絶えた早苗を見えない所へ隠そうと部屋を見渡すが、ワンルームでは隠す場所は限られている。
仕方なしにクローゼットを開けて、一番手前にあったホームセンターの大きな袋を取り出し早苗をそのスペースに押し込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!