アイシテル

4/5
前へ
/5ページ
次へ
狂気に満ちた目。 禍々しい笑顔の早苗は俺に「愛してるの」と何度も繰り返した。 ゆっくり這ってくる早苗が心底気持ち悪く、吐き気がする。 「……違う。俺は、お前を愛してなんかいない。おれは、俺はお前を騙したんだ。金だけ搾り取って、捨てようとしたんだ」 「愛してる……愛してるの……」 「……やめろ……来るなっ……!」 あまりの恐怖に、立ち上がった早苗の首を思い切り締めた。カハッと大きく口を開け、早苗は細い目を大きく開いた。 「あ……い……して……る……」 「うるさい! うるさいうるさい!!」 苦しそうに歪む顔でもまだ、早苗の口は「愛してる」と動いている。 やめろ。 やめろやめろやめろ!!! 半ば祈る気持ちで、きつくきつく早苗の首を絞め上げた。その力を緩めたのはアパートのドアをノックする音が聞こえてからだった。 強いノックが聞こえ、早苗の苗字を呼ぶ男の声がした。 「管理人の藤本ですけど。居るんでしょ? すいませんけど開けてもらえますか」 「は、はい、ちょっと待ってください」 すでに息絶えた早苗を見えない所へ隠そうと部屋を見渡すが、ワンルームでは隠す場所は限られている。 仕方なしにクローゼットを開けて、一番手前にあったホームセンターの大きな袋を取り出し早苗をそのスペースに押し込んだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加