5:フルーツパン

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「ありがと」 「優しい彼氏で羨ましい」  田原がいつものようにからかう。 「だろ?」  大我が当然という顔で同意する。そして俺はそれらの会話を、いつものようにスルーした。大我が焼きそばパンを食べながらモゴモゴ言う。 「ひんようび、なにくいたひ?」  ん? ああ、金曜日ね。 「なんでもいいよ。おばさんのご飯美味しいし」 「鍋でいい? つってたぞ」 「全然おーけー。何鍋?」 「わかんねぇ」 「鍋はたいがい好きだし。大歓迎」 「んー。じゃ言っとく」  大我は焼きそばパンをペロリとたいらげ、コロッケパンにかぶりつく。田原がニヤニヤしながら、小さな声で言った。 「じゃ、例の件、お願いね」 「あー、うん。機会があれば」 「うんうん。俺、しょんべん」  田原が両手を合わせ席を立つ。それにひらひら手を振ると、大我がジト目で俺を見ているのに気づいた。ついさっきまで温厚そうな顔でコロッケパンを食べていたのに。 「なに?」 「例の件てなに?」  当然のように聞いてくる。 「ん? はっ! そう言えば。昨日言ってた野々本さん。やっぱLINEきた」 「へ? ……やっぱり。んで、ブロックしたんだろ?」  やはり当然のように言う。 「そうしようと思ってたんだけど、田原経由でさ。友達申請なんてみんなやるんだから、考え過ぎだって。んで、さっきの例のってのは、テニス部の子と友達なりたいから仲介してって」  大我には関係ない話っちゃー話なんだけど、心配してくれたしね。  そう思って、相談に乗ってくれた大我に一通りの報告をした。すると、みるみる大我の顔から表情が消えていく。怖いくらいの無表情になってしまった。
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