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修平が店の手伝いをし出して一ヶ月が過ぎた頃である。
修平は白岩に、白岩の後妻が経営するクラブに呼び出された。
白岩も若頭の椎名も、修平に魅了された口であるが、自分の義父と同年代の白岩と修平が喧嘩をしたワケでは無い。
白岩が一方的に修平を気に入ってしまったのだ。
子供の居ない白岩は子分達を自分の子供のように思っていたが、白岩にとって修平は白岩の理想とする子供だった。
だが白岩に、三十過ぎた堅気の男をヤクザに誘うつもりは毛頭無い。
「白岩さん。話ってなんだ?」
修平が尋ねた。
「お前、花屋を継ぐそうだな?」
「継ぐかどうかはわからないけど手伝ってるよ」
「花屋は楽しいか?」
「ああ」
坊主頭で、ヒグマを連想させる巨漢の白岩が満面の笑みを浮かべた。
「良かった。花屋のお前に頼みがある」
白岩の話は、週に一回、五万円でこの店の花を活けて貰いたいと言う申し出だった。
二つ返事で引き受けた修平に白岩が更に続けた。
「花自体は三万円程度の物で良いが、一週間持つように手入れに来い」
多少は花を交換したにしろ、花屋としては破格の話だった。
修平がニヤリと笑った。
白岩の話の裏を理解したのである。
つまり白岩は、花代に色を付ける事で、客である白岩組の者に、修平が喧嘩を売れないように牽制したのだ。
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