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後日、その話を聞いた他の暴力団組織の者達も、自分達が関わるクラブの花を修平に依頼した為に、修平はヤクザ者に喧嘩を売る事が出来なくなってしまった。 それが白岩の狙いだった。 白岩は自分自身も妻を亡くしていた為に、修平の荒れ狂う気持ちが痛いほどに理解出来た。 だが、いつまでも修平に馬鹿をやらしておく分けにはいかない。 若頭の椎名が考えた苦肉の策だった。 「修平。お前の頭はなんだ? まるで彼岸花だな!」 修平の真っ赤なツンツン頭を見て白岩が嬉しそうに笑った。 「彼岸花と同じ色なんだ。カッコいいだろう?」 頷いた白岩が突然立ち上がるとシャツを脱ぎ出した。 仁王立ちのヒグマのような状態で背中を修平に向ける。 白岩の巨大な背中は、中央に龍に乗った弁天様。その周りを取り囲むように真っ赤な彼岸花の刺青で覆い尽くされていた。 「ワシはヤクザ者だが、前の女房が死んだ時に誓った」 「誓ったって何を?」 「残りの人生を彼岸花のように生きようとだ……」 シャツを着ながら白岩が話を続けた。 「彼岸花は毒々しい花の上に毒もある。だが、土の中では魂を守り、いざとなったら人を救う。 どうだ? ヤクザ者にしちゃあ上出来な誓いだろ?」 そう言って白岩が豪快に笑った。
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