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白岩の葬儀の為の飾り付けをするにあたって、修平は椎名に川本を預けられた。 力仕事などの雑用に使ってくれとの事だった。 通夜の会場となる松福寺会館は店から五十メートル程の距離にあり、葬儀は隣にある松福寺で行われる。 松福寺の住職である隆円は修平の親友である為に、仕事の現場としては恵まれた環境だった。 だが、指定暴力団の組長の葬儀と言う事もあり、県警からは数名の警察官が派遣されていた。 会館の入り口に二人。松福寺の入り口に二人。周囲を巡回する私服警官が数名、と物々しい雰囲気の上に、修平の仕事を見守る初老の刑事の視線が煩わしい。 「おい、川本! 泣いてちゃ仕事になんねえだろ!」 修平は、祭壇の中央に飾られた白岩の写真を見上げて、子供のように泣きじゃくる川本に渇を入れた。 「すいません!」 ビクリとして川本が修平に頭を下げた。昨日、修平に息巻いたのが嘘のような素直さである。 「お前、歳はいくつだ? 何でヤクザなんかになったんだ?」 「二十四です。自分はキックボクシングやってたんですけど、それで食ってける程の才能がなくて……やけになってる所を白岩のオヤジに拾ってもらったんです」
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