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「キックじゃあ、例え才能があっても食ってくのは難しいだろ」
「修平さんって何者ですか?昨日のローキック、全く見えませんでしたよ」
そう言って苦笑いを浮かべると、姿勢を正して深々と頭を下げた。
「昨日はすみませんでした。
……俺、彼岸花がオヤジにとって特別な花なのを知らなくて………」
言いながら再び涙が流れて言葉が出ない。
「すみません。ヤクザが泣いちゃダメですよね……」
修平は煙草をくわえると、川本にも勧めた。
「川本。涙に職種は関係ねえよ。男はなあ……泣いても良いんだ!」
意外、とでも言いたげに川本が修平を見つめた。
「大切な人が死んだんだ。涙が出るのは当然だろ?」
修平の言葉に川本の涙が勢いを増した。
「内緒だけどな。昨日、椎名さんは泣きながら俺の所に電話くれたんだ。
泣いても良い。でも今は泣くな。白岩さんを送る為に自分がやるべき事をやってから泣け。それが男だ!」
そう言って川本の肩を叩くと、静かな口調で続けた。
「川本……ゴメンな。俺も白岩さんの為に泣いてやりたいけど、俺は女房が死んだ時に泣きすぎて、涙が枯れちまったんだ」
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