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修平が会場となるホールを見渡した。 祭壇の至る所には花を活ける為のスペースが設けられている。 壁などにも専用のサイズの受け皿が収納出来るスペースがあり、そこに水を染み込ませたスポンジのような花材を収めて、その花材に花を活けるのだ。 義父は仲間や会館への花の運搬。ひな乃は店で篭花の作製にかかりきりだったので、素人と言えど川本の仕事はいくらでもあった。 祭壇の前にブルーシートを広げて、大きなポリバケツに水を汲んで来るように指示した修平だが、一人で運ぶには厳しい重量である。 「台車で運べよ」 「台車は修平さんのお父さんが持ってっちゃいましたよ」 川本の返答に言葉を詰まらせた修平の視線が、退屈そうにこちらを見ている刑事を捉えた。 「刑事さん。暇だろ?悪いけど手伝ってくれるかな?」 苦笑いをして初老の刑事が頷いた。 男は所轄の刑事であり、白岩の人となりを知っているが為に、初めから警備の必要性を感じてはいなかった。 退屈で身をもて余していたのである。 川本と刑事に材料等の荷物運びをさせて、修平はブラックジーンズの尻ポケットからバタフライナイフを取り出した。 慣れた手つきでバタフライナイフを回転させながらナイフを開くと、猛烈な勢いで花を活けだす。 修平としては、使い慣れている。片手で刃の開閉が出来る。と言う利点がバタフライナイフにあるのだが、おそらく、バタフライナイフを使って花を活ける、ふざけたフローリストは日本で唯一人であろう。 そもそも使い慣れていると言っても、対人用に産み出されたバタフライナイフを人に向けた事など無いのだから、使い慣れているとは言いがたいし、片手での刃の開閉もカッターナイフで事足りるのだから、修平がバタフライナイフを使っているのは遊び心に過ぎなかった。
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