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「原価だと? おい、兄ちゃん。テメエの原価は幾らだ?」
眼鏡を外した修平の表情に、川本が一瞬たじろぎながらも本能的に臨戦体勢に入った。
修平からは暴力団の若頭である椎名以上に、危険な負のオーラが漂っていた。
「兄ちゃん。花屋の料金は原価の三倍が相場だが、出張料金にデザイン料、サービス料込みの五万だ」
修平のその言葉の直後に、川本が崩れ落ちるように倒れた。
修平が川本の太股を、いきなり蹴り飛ばした為であるが、川本にしてみればバットで殴られたような衝撃だった。
「これがサービス料だ」
吐き捨てるように言って川本に近付く修平と、太股を押さえて立ち上がろうとする川本との間に、椎名が割って入った。
「修平、病院で騒ぐんじゃねえ」
静かだがドスの効いた声で椎名が修平を睨みつけた。
「別に騒いじゃいねえ。ちゃんと若いもんの教育しとけよ」
射るような視線で修平が睨み返す。
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