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修平の元に椎名から白岩の訃報の知らせが入ったのは、その日の夜の事だった。 明日、松福寺の会館で通夜を行い、明後日に松福寺で葬儀とのことだった。 「飾り付けの花は原価で良いぞ」 そう言って修平は会館と松福寺に飾る花を請け負うと、更に椎名からは二段飾りの篭花の注文が八十本あった。 修平はその旨を、すぐさま両親に告げると、家中が一気に大騒ぎになった。 修平と両親。三人で八十本の篭花を作れない事はない。 三人とも手は早い方なので、一本の篭花を作るのに約二十分。計算上は九時間で八十本の篭花を作れる事になるのだが、会場の花の飾り付けもしなければならない上に、そもそも家族経営の小さな花屋に八十本もの篭花のスタンドの持ち合わせは無い。 勿論、それほど大量の花のストックも無いし、明日の朝、市場で花を仕入れた物だけでは間に合わない。 市場で売っている花は蕾だが、式には今を盛りに咲き誇る花が必要だった。 「白岩ちゃんの葬儀じゃ、もっと注文が増えるね……あんた、明日は市場中の胡蝶蘭とカトレア買い占めちゃってよ!」 義母のひな乃が、花屋仲間に電話中の義父に告げた。 ひな乃は金髪の派手なオバサンだが、商店街の女ボスであり、義父は消防団の団長も勤めている。 「Aクラスの白菊も全部買っちまうぞ」 そう答えながら義父が五人の花屋仲間に仕事を割り振った。 葬儀の仕事は急な仕事である為に、仲間内で仕事や花を回す事は珍しくは無い事だった。
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