Halt(Japan)

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 初参戦だった世界選手権は、収穫よりもこれからの課題のほうが多かったけれど、この新しいチームのレベルではなかなかの好成績だったといえる。帰国後は、スポンサー関連のイベントや撮影、専門誌やウェブ記事の取材が続き、ひと段落ついたところで気づけば十二月、モータースポーツには厳しい季節になっていた。  約二カ月ぶりに訪れたカポエイラのスタジオでも会うことはかなわなかった。彼が通う曜日と時間を聞き出し、岐路につく。  バイクに跨がった信号待ちで、視線を横にずらし明滅する青色の歩行者信号を見つめて、ふと、疲れたな、と思った。  また空振りに終わった徒労感がみせた空虚な幻想かもしれないが、確かに俺はそう思った。思って、溜息まででた。  細切れにされた一秒、気の遠くなるような一瞬を競うことになんの意味があるのだろう。過ぎ去ったその一瞬のためにギリギリまで精神を磨り減らし、点になった視界の先へ自分の命さえかける。  バイクに乗り始めた幼いころ、快感とはまた別の愉しさがあった。体の内側から叩かれるようなエンジンの振動や音、飛ぶような、風になったような、その感覚が好きだった。  それがいつしか、エンジン音は鼓動の一部になったみたいに溶けて消え、風の速度を追い越した。マニュアル化された駆け引きと、タイミング重視のライディングテクニック――勝てば、当然気持ちいいが、言ってしまえばそれだけだ。  幼いころの昂奮や情熱は、今や、義務とルーティーンに変わりつつある。
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