1年C組 戸倉晴都

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 桜が咲き、学年がひとつ繰り上がって、俺は高校三年生になった。  新入生受付係に立候補し、入学式を指折り数えて待っていた。在校生の中で俺ほどこの日を心待ちにしていたやつはいないんじゃなかろうか。二日先のオフ日を繰り上げて、長テーブルに並べれた名簿を上から順に辿っていく。  名簿の上に桜が舞い散る。  A組……いない。  B組……いない。  C組……ばくん。  その瞬間、めまいがした。目の前がチカチカして、その名前をなぞる指先が震えていた。心臓がギリギリとねじれて悲鳴をあげている。 「モト、大丈夫?」  同じ係の子が心配して、声をかけてくれる。 「由実ちゃん。俺、C組やっていいかな」 「いいけど。ちょっとモト、どうしたの……泣いてるの?」  ず、と鼻をすすって、パイプ椅子に腰を落とした。 「ずっと好きだった子にやっと会えるんだ」  
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