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「ちがうよ晴ちゃ……や、そうなのかもしれないけど、その前に市原元春だよ! 晴ちゃん、知らないの?」
「はあ」
「え、うそ……晴ちゃん嘘でしょ? この街に住んでて市原元春知らないとかありえる? 小学生の頃だけど密着特番やってたじゃん! 親子三代で天才バイクレーサーって」
「小学生の頃、俺、日本いねえし」
「スポーツニュース観ないの? 去年の世界選手権シリーズめちゃくちゃ取り上げてたよ! シンガポールの若手チームに移籍して最短で世界選手権に出場したって――」
「だいたいその時間、外で踊ってる」
「え、え、じゃあ、もう帰ったらテレビつけて! そのうち目を緑に光らせて雷の中へバイクで突っ込んでるから!」
ああ、スポンサーの……あのエナジードリンクのCM、そんな演出になってたのか。
へえ、と彼は改めて俺を上から下までまじまじと眺める。
「で、なんの用すか?」
「えっ、だから、その、このあと飯でもど」
「行きます行きます!」
と、元気なほうの子が食い気味に挙手してくれて助かったけど、その横で、彼と能面美人が無言で顔を見合わせていたのが気にかかった。
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