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ホテルに帰り、ようやく麻痺がとけかけてうっすら覚醒した。それから一晩、俺は、帰国するフライトまで彼をネット検索して過ごした。
ダンスフェスの主催者に彼の素性を聞けばよかったと考え至るも後の祭り、ダンスフェスのHPには「Halto」に関するめぼしい情報はなかった。
彼が披露した踊りで名前がわかりそうなものは、日本舞踊とバレエのみ、前者で検索をかけると、日舞教室のブログで今日のダンスフェスを取り上げているページがあった。どうやら、その教室からの参加だったらしい。
彼の名前は戸倉晴都、俺の二つ下、中学三年生。日舞をはじめて三ヶ月、彼の飲み込みの早さと勘の良さは、バレエ仕込みなのかもしれない、と書かれている。
そして彼の、およそ二年間の凄まじい受賞歴が、さらりとまとめられていた。
畑は違えど、彼は、俺と同じ部類の人間だと直感した。貪欲で、図太く、怖い物知らずで、欲しいものは必ず手に入れる。
天才――字面にするとひどくチープだが、彼は、紛れもなく、その道に愛された側の人間だった。
欲しい。晴都を手に入れたい。
あれが俺の手の上で踊っていたら、どんなに良い気分だろう。
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