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店内の広間を見て、双伍は唖然とした。
まるで屍の山だった。
血生臭さが、あたり一面に漂っている。
「双伍、おめえはどう思う?」
いきなり沢村に尋ねられて、双伍は何のことかすぐにはわからなかった。
だが、女中と思われる遺体の刺し傷を、沢村が十手で指し示している
ことで、刀傷を見るように指示されたことを悟った。
双伍はその仏さんに手を合わせてから、傷口をのぞきこんだ。
これは・・・!
双伍の意の中で、ひらめくものがあった。
「おめえも変だと思うだろ?
オレもこんな刀傷は見たことねぇ。
薄刃ののようだが、どの仏さんも胸を一突き。
夕べは新月だから、闇一色のはず。そんな暗闇で
正確無比に一突きたぁ・・・それも薄刃の刃やいばでなぁ」
沢村誠真も腕を組んで、考えこんだ。
まあ、無理もない・・・と双伍は思う。
沢村誠真も剣の達人とはいえ、このような剣は実物を
見たことはあるまい・・・。
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