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「沢村の旦那。平蔵の親方に面通しさせてくれねえでやすか?」
双伍の申し出に、少し驚いた様子の沢村誠真だったが、
にやりと笑い、言った。
「ああ・・・掛け合ってみる」
双伍という男が、平蔵の親方に面通しを願うには、
何か特別な相談がある時だけだということを、
沢村誠真は知っていた。
この男、早くも下手人の心当たりでもあるというのか・・・。
自分たち、与力同心に直接言わないのは、二つの気遣いを
しているからだ。
まず、双伍の情報が不確かなとき、岡っ引きに与力同心が
振り回されたとあっては、面目にかかわる。
それともうひとつ、長谷川平蔵宣以に話を持ち込んで、
その真偽を吟味してもらうこと。
平蔵の親方が間違いないと判断すれば、与力同心を動かす
大義名分ができようというもの。
「番屋に戻ってろ。面通しが許されれば
誰か使いの者をよこす」
「へい、承知しました」
そう言うと、双伍は何か浮かぬ顔で、もと来た道を歩いていった。
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