天魔衆二

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天魔衆二

清水門外の役宅、その裏手の土間に双伍は、 膝をついてたたずんでいた。 「ほう、おめえの見立てでは、仏の刺し傷は  忍び刀じゃねえかと?」 長谷川平蔵宣以はキセルの煙をくゆらしながら言った。 板の縁側にあぐらを構えている。 「へえ、侍の刀傷にしては、血の量が少ねえし、  傷口も細い。それにどの仏も、たった一刺しで  殺されているんでさぁ。もうひとつ言わせてもらえると、  新月の闇夜の中で、これほどあざやかに働きができるのは、  忍びの者ではないかと」 双伍は両眼を細めた。 「なるほどな。忍びの者であった、おぬしならではの目立てか。  先月にも同じような事件があったのは知ってるな?」 平蔵はキセルの灰を膝でポンと叩き落した。
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