鬼平暗殺五

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長谷川平蔵は八丁堀の官舎に常駐している 与力同心はもとより、非番の者も緊急招集して、 三ノ輪の廃屋へと向かった。総勢20余名。 同行する双伍を見て、怪訝な顔をしている者も いたが、長谷川平蔵は、「ただの新入りだ」とだけ 答えた。 一刻ほどしてたどり着いた三の輪の廃屋は、 今にも崩れそうな様相だった。 柱は曲がり、屋根は歪んでいる。 長谷川平蔵以下、部下たちは一気に 屋敷になだれ込んだ。 中には40名ほどの盗賊一味がいた。 そこで双伍は疑問を感じた。 たしか<風魔>の者もいたはずだ。 それが気配さえ感じない。 「火付盗賊改方、長谷川平蔵なり!  一同の者、神妙にせい!  縛につかねば、斬り捨てるぞ!」 とたんに盗賊たちは刀、匕首を手にして、 反撃してきた。 その者たちを、長谷川平蔵をはじめとする 手練てだれの部下たちが斬り捨てていく。 双伍は弟の幻也が拉致されていると見られる、 奥座敷に向かって、突っ走った。 邪魔するものは、両の十手で打ち据えていく。 半刻もせぬうちに、盗賊40名のうち、 10名が斬り捨てられ、15名が重傷を負った。 残りの者はあきらめて縛についた。 双伍は奥座敷の襖を開け放った。 だが・・・そこはもぬけの空からだった。 幻也はおろか、10名ほどいた<風魔>の忍びの 姿もなかった―――。
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