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江戸城の東にある人形町は、火炎に包まれていた。
紙物問屋、備前屋が火元と見られた。
備前屋の周囲、八棟の屋敷が町火消したちによって、
取り壊されている。
備前屋の周りには、おびただしい数の人だかりができ、
町火消したちの怒号が鳴り響いた。
周囲の八棟の中で焼け出され、生き残った者は
全身煤だらけで、地面にへたり込み、
汗と涙で人相さえも判別できない。
それでもなお、備前屋は黒煙を上げながら、
夜空に真っ赤な炎の柱を立て続けていた・・・。
翌日の明け方近くになって、
備前屋の火災は、ようやく鎮火の兆しを見せた。
その検分をするため、火付盗賊改方の与力同心が
駆り出される。
その理由は、火元の備前屋の焼け跡から、
主人とその妻、彼らの二人の年端も行かない息子、
そして番頭、奉公人あわせて18名の、
他殺体が見つかったからだった。
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