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その場では買わないで後日買いに来ると言った俺に対して、美弥は何の疑問も持っていないみたいだった。
たぶん、今日は下見だから金を持ってきていないんだなとでも思ったんだろう。
後日、1人で同じ店に足を運んだ俺は、気になっていたオープンハートのペンダントを手に取った。
中学の頃、仲の良かった友達が彼女へのプレゼントに買っていたのが、このオープンハートだった。
「”俺に心を開いてください”って意味があるんだって。」
彼は俺にそう説明した。同級生同士のそのカップルは誰もがうらやむほど仲が良かった。
「一世を風靡したデザインなので古いと思われるかもしれませんが、いいものだからこそ息が長いんだとも言えますよね。」
いきなり店員が話しかけてきて戸惑ったが、オープンハートのことだとわかった。
ふーん。時代遅れだと思われるかもってことか。
考えてみれば、友達がプレゼントした頃から10年は経っている。あの頃、流行っていたのか、もっと前に流行ったのかは知らないが。
「シルバーは若向きというイメージがあるようで、ゴールドを選ばれる方が多いんですよ。」
なんで、シルバーが若向きでゴールドが大人向けなのか。色から言ったらシルバーの方が地味なのに。単に値段的なことか? そりゃあ、金の方が高いよな。
いろいろ他のも見せてもらったが、やっぱりオープンハートがいいと思ってゴールドのを購入した。
別に美弥が俺に心を開いていないとは思っていない。
キスをするようになってからは、俺も美弥に愛されているという自信が湧いてきた。
顔中舐め回しても嫌がらないんだから、俺を愛しているに違いない。
だけど、彼女のすべてを教えてもらえているかと聞かれたら、たぶんまだだと答えるだろう。
まだ、何かある。
美弥を構成する大事なピースを俺は知らないでいる。そんな気がしていた。
だからこその、”オープンハート”。
この意味が伝わればいい。
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