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確かにリクエストとは違う物をプレゼントした俺が悪かったのかもしれない。
でも、まさか、こんなに困った顔をされるとは思ってもみなかった。
「えっと。あれ? なんで?」
ラッピングを取って箱を開けた美弥の表情を見て、俺はちょっとムッとしたほどだ。
あんなそら豆よりもずっといいものをプレゼントしたのに、その顔は何だよ、と思ってしまった。
「気に入らなかった?」
そう尋ねた俺がよほど不機嫌に見えたんだろう。
美弥は慌てて首を振った。
「ごめん。そうじゃなくて。…これ、もう持ってるの。」
「は?」
「昔、ある人にプレゼントされて。あ、でも、亘に会う時は、亘にもらった方を着けるから。」
それって、なんか…
二股かけられてる?
「ある人って、元カレ?」
俺は美弥の初カレだと言われて、すっかり信じていたけど。
ただの友達や親兄弟がこんな意味深なペンダントをプレゼントするとは思えない。
「そんなんじゃないよ。元カレなんていないもん。」
じゃあ、やっぱり二股?
俺に会う時は俺にもらった方を着けて、そいつと会う時はそいつにもらった方を着ける。そういうことなんだろ?
昔、もらったけど捨ててなくて、これからも捨てるつもりはない。てことは、ずっとそいつと続いているってことなんだろ?
二股じゃなくて、俺が浮気相手なのか?
もう、頭の中はマイナス思考だらけ。
美弥の22歳の誕生日を祝うことも忘れ、美弥と最後までヤるどころじゃなくなって、俺はオープンハートをひったくるようにして美弥の部屋を後にした。
その時の俺はかなり冷たい態度だったんだろう。
1週間に1度しかデートしない美弥が、次の日の夜、俺のアパートの部屋の前で待っていた。
鼻の頭が赤いのは泣いたからじゃなくて、寒かったからだとは思うけど。
「急に怒って帰っちゃうなんて酷いよ。説明も聞かないで。」
俺の顔を見るなり、美弥は文句を言ってきた。
そうだった。美弥はこういうやつだった。泣いたり謝ったりしない。
もちろん、自分が悪いと思ったら素直に謝る。
でも、悪くないと思ったら、とことん戦うタイプだ。
そんな美弥の面構えを見たら、笑えてきた。
”疚しさ”の欠片も見えない美弥が、二股や浮気をしているわけがない。
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