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図書館の自動扉が開き、暖かい室内に冷えた風が通る。優真は、慌ててマフラーに鼻先を埋めた。
校門までを示すように並ぶ街路樹は茶色く変色し、もの寂しげに揺れる。優真と弘樹はそこを歩く学生の中に紛れ、何を話すでもなく、歩調だけを合わせた。
時折、弘樹がすれ違う学生たちに声をかけられ、笑顔で手を振り返す。大体は優真の知らない学生で、そういう時の彼は、弘樹の陰に隠れてそっぽを向いている。
「そう言えばね、優真」
幾人目かの女の子に手を振った弘樹が、思い出したように声を弾ませる。弘樹の方がほんの少し高い身長に、優真は心持ち視線を上にあげた。
「昨日、友達に誘われたんだけど」
ざぁっと風が抜け、木枯らしに数少ない葉が宙を舞う。優真のマフラーが、ふわりと弧を描いた。
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