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千代さんの心中を察し、胸が苦しくなる……。
「それで─────
……大丈夫か?」
「えっ、あ…はい」
紫九さんがそっと目を細めてこちらをじっと見る。
そしてゆっくりと伸びてきた手は、私の
頬に添えられた。
暖かくて大きな手が、私の頬を優しく撫でる。
「柔らかいな………」
彼はそう呟いてゆっくりと手を引いた。
「続き。話してもいいか?」
彼は探るように確かめる。
私のことを気遣ってくれたのだろうか……?
そう思うと心が温かい気持ちで一杯になった。
哀しみで冷えた心がじんわりと温められる。
頬を少し触られただけなのに、心には大きな影響が現れた。
「はい…」
穏やかな気持ちになり、コクリとひとつ小さく頷く。
彼はひと呼吸置いて話を再開させた。
「千代にはとても、狐姿の子は育てられなかった…。
そこで白狐家は狐姿の子を跡継ぎとして大切に育てることと引き替えに、白那様と子どもには二度と接触しないことを約束させた」
自分の産んだ子に会えないだなんて……。
そんなの、あんまりだよ…………
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