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そんな彼に勇気のお返しをしたい。
そう心に決め、「大丈夫です、教えてください」と教えを乞うた。
「わかった……」
彼はひとつ深い深呼吸をし、暫くの間沈黙を貫いた。
私はその間話を急かすようなことはせずに、静かに口を開く彼を待ち続ける。
「────家(うち)白狐家(びゃっこけ)の伝説を記した古い書物が、最近倉から見つかった。それがコトの始まりだ」
彼はそこでひと息ついて、暫しの間をつくる。
────白狐家。
それが彼の家。
彼は狐の中でも白狐なのだろうか?
そこまで理解したと小さく頷けば、彼はそれを合図にゆっくりとだが言葉を紡ぎ始める。
「…家は150年前くらいから白狐家としての役目を果たせずにいて、潰れる寸前だった。
役目……というのは白狐が持つ霊力をもってその土地の人々に幸福をもたらすことなのだが、
近年は強い霊力を持って生まれてくる白狐が減少傾向で…
人々の幸せどころか、他の一族に襲われるばかりで…自分達一族の幸せまでも手放してしまっていたんだ」
彼は「はあぁ…」と思いため息を吐き出した。
「俺の家族も襲われて………………殺された」
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