59人が本棚に入れています
本棚に追加
はっ、と口を両手で覆い、彼の口から発せられた言葉の意味に驚き哀れんだ。
他人の彼ではあるが、自分の家族が殺されたら……………と思うと息が詰まる。
「それで…………」
哀しみの感情から、彼の話へと焦点を合わせたが、衝撃は消えない。
「その書物に家を救えるひとつの方法が記してあったんだ」
「ど、どんな方法なんですか?」
私に出来ることなら協力してあげたい。
ついさっき知り合ったばかりの彼ではあるが、深い事情を聞かされた限りのことはしたい。
「それは──────………」
彼は言いにくそうに私から目線を外した。
「紫九さん?」
「お前………佐倉暁乃との一族の後継者を産むことだ」
「っ!!」
私が…一族の後継者を………産む?
産むって……………誰との!?
「だ、誰のをですか」
「……求婚をされた相手だ」
求婚……………つまり、
「紫九…さん」
呆然と目の前の彼を見れば、彼は話を続けた。
「誰でもいいという訳ではないんだ。その書物には、“後継者の母なる者には“千代姫”の子孫を────”と書いてあった」
最初のコメントを投稿しよう!