謎の男

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はっ、と口を両手で覆い、彼の口から発せられた言葉の意味に驚き哀れんだ。 他人の彼ではあるが、自分の家族が殺されたら……………と思うと息が詰まる。  「それで…………」 哀しみの感情から、彼の話へと焦点を合わせたが、衝撃は消えない。  「その書物に家を救えるひとつの方法が記してあったんだ」  「ど、どんな方法なんですか?」 私に出来ることなら協力してあげたい。 ついさっき知り合ったばかりの彼ではあるが、深い事情を聞かされた限りのことはしたい。  「それは──────………」 彼は言いにくそうに私から目線を外した。  「紫九さん?」  「お前………佐倉暁乃との一族の後継者を産むことだ」  「っ!!」 私が…一族の後継者を………産む? 産むって……………誰との!?  「だ、誰のをですか」  「……求婚をされた相手だ」 求婚……………つまり、  「紫九…さん」 呆然と目の前の彼を見れば、彼は話を続けた。  「誰でもいいという訳ではないんだ。その書物には、“後継者の母なる者には“千代姫”の子孫を────”と書いてあった」
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