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「ち…“千代姫”……とは?」
「“千代姫”とは大昔、俺らの先祖である“白那(はくな)様”と恋に堕ちた女性だ」
千代姫に白那様…………?
もう、何が何だか分からない。
情報整理を彼に求めれば、彼は「…確かに、一気に詰め込みすぎたな」と微笑んだ。
「時代の流れに沿って…順に説明しよう。───大昔、ある村に“千代”という名の女児が生まれた。これが後の“千代姫”だ。ここまで分かったか?」
「はい…」
なんだか昔話みたいな話し方でわかりやすい。
これならお話を聞く感覚で理解できるかも。
「それと同じくらいに、白狐家に“白那”という名の男児が生まれた」
「ふたりはすくすくと育ち、千代は美しい村娘に、白那は白狐家の勇ましい跡継ぎへと成長する」
「それから白那様は白狐家の跡を継ぎ、ひとりの白狐の女と結婚して子供を産んだ。………千代は、美しかったが……………」
彼は語りを止め、それっきり口をつぐんでしまった。
「紫九さん?どうかされましたか?」
彼はふるふると首を横に振り、難しい顔をして語りを再開させる。
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