謎の男

10/13
前へ
/24ページ
次へ
 「ち…“千代姫”……とは?」  「“千代姫”とは大昔、俺らの先祖である“白那(はくな)様”と恋に堕ちた女性だ」 千代姫に白那様…………? もう、何が何だか分からない。 情報整理を彼に求めれば、彼は「…確かに、一気に詰め込みすぎたな」と微笑んだ。  「時代の流れに沿って…順に説明しよう。───大昔、ある村に“千代”という名の女児が生まれた。これが後の“千代姫”だ。ここまで分かったか?」  「はい…」 なんだか昔話みたいな話し方でわかりやすい。 これならお話を聞く感覚で理解できるかも。  「それと同じくらいに、白狐家に“白那”という名の男児が生まれた」  「ふたりはすくすくと育ち、千代は美しい村娘に、白那は白狐家の勇ましい跡継ぎへと成長する」  「それから白那様は白狐家の跡を継ぎ、ひとりの白狐の女と結婚して子供を産んだ。………千代は、美しかったが……………」 彼は語りを止め、それっきり口をつぐんでしまった。  「紫九さん?どうかされましたか?」 彼はふるふると首を横に振り、難しい顔をして語りを再開させる。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加