謎の男

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 「…千代は美しかったが、生まれ持った強い霊力のせいで人々は恐れ、ひとり寂しく山奥で閑かな生活を送っていた」  「…………」 そんな…可哀想……… 私だったら、そんな生活耐えられない。 紫九さんも神妙な顔つきで目を伏せる。  「───そんなときだった。白那様が屋敷を飛び出して、山にひとり赴いたのは」  「屋敷を飛び出した……?」 子供じゃああるまいし…… 何故?  「あぁ、詳しくはわからないが…… 現在(いま)では嫁との不仲で飛び出したんじゃないかと言われている」  「お嫁さん?というのは」  「白那様の前妻だ。白狐の中では上級階級の家の出身で筋金入りのお嬢様。 優しく逞しかったらしい──────が、」 一旦言葉を切り、思い出したように苦笑する。  「白那様とはかみ合わなかったらしくてな」  「はぁ……」 それで山に飛び出したのか…。 イメージではもっと堅苦しい方なのかと思ったけれども、以外に無鉄砲なのね。  「そこで、白那様は千代に出会ったんだ。 …さぞかし驚いたことだろう。山中に人間の若い娘が一人で暮らしていたんだからな」
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